発売から30年 睡眠導入剤「デパス」に深刻な副作用が次々と

https://friday.kodansha.co.jp/article/87122

発売から30年 睡眠導入剤「デパス」に深刻な副作用が次々と

 FRIDAYデジタルで『発売から30年 睡眠導入剤「デパス」に深刻な副作用が次々と』という記事を見つけましたので、ご紹介します。

記事中の薬について

作動部位 系統 販売名 薬効分類名
GABA-A受容体作動薬
(ベンゾジアゼピン結合部位を持つ)
チエノジアゼピン系 デパス 精神安定剤
ベンゾジアゼピン系 ハルシオン 睡眠導入剤
ベンゾジアゼピン系 セルシン マイナートランキライザー
ベンゾジアゼピン系 ドラール 睡眠障害改善剤

※薬効分類名は製薬会社の裁量である程度自由に決められるようで、確固たる基準はなさそうです。

※マイナートランキライザーとは精神安定剤の事です。

睡眠薬と睡眠導入剤

 睡眠導入剤とは中々寝付けない場合に用いる、超短時間作用型(1時間程度で効き、持続しない)の睡眠薬を指す名称です。しかし、睡眠導入剤に厳格な定義はないようです。

睡眠薬の分類

分類 作動部位 系統または物質名
睡眠薬 GABA-A受容体作動薬 ベンゾジアゼピン系
※13種類ある
チエノジアゼピン系
※1種類ある
Z薬(非ベンゾジアゼピン系)
※3種類ある
メラトニン受容体作動薬 ラメルテオン
オレキシン受容体拮抗薬 スボレキサント
睡眠改善薬 ヒスタミンH1受容体拮抗薬

ジフェンヒドラミン塩酸塩
※処方箋なしで、薬局で買える

※種類の数は薬効分類名に「眠」の文字が入っているものをカウントしています。その条件を外せば他にもあります。

GABA-A受容体作動薬

 GABA-A受容体は興奮伝達を調節する部位で、そこに作用する薬をGABA-A受容体作動薬と言います。その受容体に作動薬が結合すると、興奮伝達を弱めます。その結果、眠たくなったり、気分がぼんやりしたり、筋肉がゆるんだり、けいれんが収まったり、記憶が曖昧になったりします。

 バルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系、チエノジアゼピン系、Z薬はGABA-A受容体作動薬です。この中でバルビツール酸系以外はGABA-A受容体にあるベンゾジアゼピン結合部位に作用します。ベンゾジアゼピン結合部位は興奮伝達の抑制力を増強させる働きで、直接的に興奮伝達を抑制しないので、バルビツール酸系と比べて安全と言われています。しかし、薬が干渉し続けると興奮を抑制する調節力が徐々に失われる懸念があり、それに対して薬を増強するとやがて悪化して、最終的に薬の効果をほとんど感じなくなります。その原因はGABA-A受容体がダメージを受けて、減少したり感度が低下したからと考えられています。その回復には、原因の薬物をゆっくり減らしていく必要があり、個人差はありますが、離脱症状があり苦痛を伴います。

 お酒に含まれるエタノールもGABA-A受容体作動薬です。アルコール依存症の方がお酒を止めるのに苦労するのと似ています。お酒を飲むとすっかり元気になりますが、一時的に過ぎず、止めると禁断症状(=離脱症状)が現れます。

 GABA-A受容体作動薬は、一度しっかり眠らないと回復が望めない場合など、2~4週間まで使用して、その後は使用を中止する方が良いかもしれません。医師と話し合い計画的に使用する方が良いと思います。

「脳の機能を低下させて眠気を誘うもの」

引用:https://friday.kodansha.co.jp/article/87122 (紹介記事より)

 GABA-A受容体作動薬は眠らせる薬であって、眠れるように体質改善する薬ではありません。

メラトニン受容体作動薬

 メラトニンは季節のリズムや概日リズム(サーカディアンリズム)の調節作用をもつホルモンです。メラトニンは日没して暗くなると多く分泌され、眠るための準備が始まります。夜間でも明るい場所に身を置くとメラトニンの分泌は減ります。

 メラトニン受容体作動薬はメラトニンに似せて作った薬で、催眠を促す効果があります。日本では、物質名:ラメルテオン、販売名:ロゼレムとして処方されています。GABA-A受容体作動薬と比べると効き目は弱いようです。

参考資料:

オレキシン受容体拮抗薬

 オレキシン受容体は覚醒に関係する受容体で、その受容体にオレキシンが一時的に結合しないようにする薬が、オレキシン受容体拮抗薬です。GABA-A受容体作動薬と比べて反跳性不眠や離脱作用が少ないらしい。Z薬のゾルピデム(マイスリー)と同様の乱用性があるらしい。

 物質名:スボレキサント、販売名:ベルソムラが存在し、2016年12月に販売開始された比較的新しい薬ですから、表面化していない問題点があるかもしれません。

 添付文書に以下のようにあります。

重要な基本的注意

(中略)

2.

症状が改善した場合は、本剤の投与継続の要否について検討し、本剤を漫然と投与しないよう注意すること。

添付文書より引用:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/170050_1190023F1024_1_11#236

参考資料:

睡眠改善薬

 睡眠改善薬はヒスタミンH1受容体拮抗薬を使った薬です。処方箋なしで薬局で購入できる、一般用医薬品です。OTC(オーバー・ザ・カウンター)医薬品と呼ばれます。商品名:ドリエルとして知られています。

 ヒスタミンは神経細胞を興奮させ覚醒を維持・調節するのに関与しており、ヒスタミンがヒスタミンH1受容体に結合しないように邪魔をするのが、ヒスタミンH1受容体拮抗薬です。その結果、覚醒レベルが低下し眠気を与えます。

 睡眠改善薬は一時的な不眠症状に使用するもので、不眠治療を受けている場合は使用すべきではありません。睡眠薬と同様の効果は期待できないとされています。

 ご不明な点は、薬剤師にお尋ねいただくか、添付文書をお読みください。

参考資料:

睡眠薬と抗不安薬の違い

睡眠薬と抗不安薬は厳密には異なるので、自己判断で薬を増減する前に、医師や薬剤師にご相談をお願いします。

 GABA-A受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系、チエノジアゼピン系、Z薬)を使った薬は睡眠薬、抗不安薬などがあります。厳密にいえば、睡眠薬と抗不安薬は意味のある分類だと思います。しかし、ビスケットとクラッカーの違いみたいなもので、大きな違いはないと私は感じています。処方薬として審査を受けるときに、薬にどういう価値を見出し書類を整えたかの違いです。現在、精神安定剤として販売されているものが、睡眠薬として審査を受けたら通るかもしれません。私の経験上、精神安定剤でも眠気を感じます。

 5量体と言って、GABA-A受容体は5つのサブユニットが組み合わさって構成されています。サブユニットには19種類あるそうで、その組み合わせの違いで薬の感受性が異なります。年齢や個人差でその分布の仕方が異なり、薬の効き方の個人差に関係があります。薬の分子式が異なると、結合しやすい5量体が異なるので、薬の種類によって薬の作用が異なることと関係があります。

 Z薬は先に説明した5量体に選択的に作用するので、ベンゾジアゼピン系と比較して抗不安作用が少ないとされています。

 睡眠薬と抗不安薬は全く別の薬と思っている方もいらっしゃると思いますが、同じGABA-A受容体に作用します。併用すると作用が強くなりすぎる可能性があります。

参考資料:

デパス、アモバンが向精神薬に指定される(2016年10月14日)

向精神薬に指定される意義

 麻薬及び向精神薬取締法による向精神薬に指定されることにより、一度に処方できる量が制限されます。デパス(物質名:エチゾラム)とアモバン(物質名:ゾピクロン)は30日分までに制限が決まりました。ただし、通院を繰り返せば何回も受け取ることは可能です。

 向精神薬に指定されると、保管場所や管理を厳重にする必要があります。また、輸出入に制限が生じます。

 これらの意義は、医療提供者側にデパスやアモバンは慎重に扱う薬であると認識されて、処方の再検討を促したことだと思います。患者にとっても、一度に処方できる量が制限されたことによって、これらの薬が向精神薬であると認識されて、使用の再検討を促したと思います。個人輸入して使用していた人にも同様です。

参考資料:

販売名:デパス等(物質名:エチゾラム)

 デパスはチエノジアゼピン系(≒ベンゾジアゼピン系)の抗不安薬で催眠作用もあるので睡眠薬としても使われます。

 チエノジアゼピン系はベンゾジアゼピン骨格にあるベンゼン環がチオフェン環に置き換わった化合物です。ベンゾジアゼピン系と同様にGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用します。

 デパスは先発医薬品で、他にジェネリック医薬品が十数種類あり、販売名にエチゾラムを含みます。

参考資料:

販売名:アモバンなど(物質名:ゾピクロン)

 アモバンはZ薬(非ベンゾジアゼピン系)でGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用する睡眠薬です。多くがZの頭文字を持つことからZ薬と呼ばれています。非ベンゾジアゼピン系とも呼ばれているが、ベンゾジアゼピン系類似薬なのに、名称から無関係の印象を与えるので、私はZ薬と呼ぶようにしています。

 ベンゾジアゼピン系と違うのは、GABA-A受容体にある特定のサブユニットに選択的に結合することで、催眠作用はあるが、抗不安作用は少ないとされています。

 アモバンは先発医薬品で、他にジェネリック医薬品が数種類あり、販売名にゾピクロンを含むものと、独自の販売名を持つものがあります。

参考資料:

行政からの注意喚起(2017年3月)

離脱症状

 離脱症状とは薬を減らした時に現れる望ましくない諸症状の事です。

 GABA-A受容体作動薬を連用すると、GABA-A受容体がダメージをうけて興奮伝達をコントロールする能力が低下します。それに対して薬を増やすと一時的に回復したように感じますが、さらにGABA-A受容体がダメージを受けます。結局は、薬を適切に止めない限りGABA-A受容体が回復する機会を得られませんが、減薬したら興奮伝達の調節が乱れて様々な離脱症状が現れます。離脱症状の内容はその薬で抑えていた症状が強く現れます。不眠治療が目的ならきっと不眠になるでしょう。

 離脱症状に耐えられる減薬量を探るためにも一気に断薬しないでください。筋肉トレーニングみたいなもので、ぎりぎり耐えられる負荷を探すことが大切です。

 GABA-A受容体作動薬を増量したくなったら、その段階で減薬を検討すべきかもしれません。GABA-A受容体を積極的に回復する薬や治療法を私は聞いたことがありません。できることは、原因の薬物を適切に減らし、内臓に負担をかけない食事に変えることです。私は減薬時に、神経痛や末梢神経炎に対して使われるビタノイリンカプセル(ビタミンB1、B6、B12配合剤)を処方してもらいましたが、食事に気を付ければ十分に補えると担当医に言われました。

 私にとって、初診時の苦しみより、離脱症状の苦しみの方が上回りました。私の離脱症状は不眠、不安、筋肉のけいれんや不随意運動、筋肉痛、音や光に対して過敏、のぼせ、急に眠くなる、だるさ、嫌な記憶のフラッシュバック、悪夢、心拍数が高いなど、自律神経失調症のような症状が現れました。筆舌に尽くしがたいとはこのことです。それでもなぜ減薬し断薬したかと言えば、アシュトンマニュアルに書かれている内容に真実味があり、治療と逆のプロセスを辿ることで回復が実感できたからでした。引き算の治療を実践できたと自負しています。

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