ウォータータイトレーションについて


はじめに

 私はウォータータイトレーションの実践者ではありません。概念を理解しているだけです。

 減薬時にウォータータイトレーションを知っていましたが、実践しなかった理由は、ベンゾジアゼピン系などのGABA-A受容体作動薬は水に溶けないと添付文書を調べて知ったからです。

 減薬ペースが早すぎると辛い離脱症状が現れて、再増量をしたくなります。断薬に成功しても、離脱症状が尾を引く蔓延性離脱症状に悩まされ、後遺症が残る場合があるようです。

 ウォータータイトレーションは実践者の報告によると、減薬量を細かく調節できるので、無理のない減薬ができ、その後の経過も良いそうです。

 減薬量を細かく調節したいが、医師や薬剤師の協力を得られない場合に、やむおえず取る手段なので、推奨するものではありません

GABA-A受容体作動薬の簡単な紹介

種類

  • バルビツール酸系
  • ベンゾジアゼピン系
  • チエノジアゼピン系
  • Z薬(非ベンゾジアゼピン系)

作用

  • 催眠作用
  • 坑不安作用
  • 抗けいれん作用
  • 筋弛緩作用
  • 健忘作用

ウォータータイトレーションとは

 タイトレーション(Titration)は医学用語においては生理学的機能または薬物投与量のバランスを継続的に測定し調整することを意味します。

 ウォータータイトレーション(Water Titration)とは水を使って調節をしやすくすることです。GABA-A受容体作動薬は段階的に減薬するほうが良い場合が多いですが、錠剤のままでは微調整が難しいので、水で希釈してスケールを大きくしてから測り分ける方法がウォータータイトレーションです。

ウォータータイトレーションの必要性

離脱症状を避ける為に

 GABA-A受容体作動薬で薬局で渡されるものは錠剤か細粒(粉のクスリ)です。GABA-A受容体作動薬は急速に減薬すると生命が危うくなる離脱症状が現れる場合があります。離脱症状をギリギリ感じない減薬量を測り分けたいのですが、錠剤と細粒どちらもキッチンスケール(はかり)で測り分けるのが難しいので、ウォータータイトレーションが必要です。

ソラナックス錠の場合

 ソラナックス錠の場合は、0.4mg錠と0.8mg錠があります。それぞれに半分に割るための割線があり、最小で0.2mgを作れます。普通に用意できるのが、0.8mg、0.6(0.4+0.2)mg、0.4mg、0.2mgです。0.8mgを50ステップで減薬する場合、1ステップ0.015mgになります。普通のやり方で錠剤を50等分するのは無理です。

主成分 + 添加物 = 錠剤

 ソラナックス錠だけではありませんが、ソラナックス0.4mg錠と表示されていた場合、0.4mgは有効成分の重さです。その他に錠剤の形を整える物、味を整える物、効果を調節する物などの添加物が入っていますので、1錠の重さは0.4mg+添加物になります。錠剤全体の重さを計測してから、分割量を決定する必要があります。

主成分 + 添加物 = 細粒

 細粒(粉のクスリ)は主成分の割合が%表示されていると思います。10%と表示されていた場合、1000mg中の100mgが主成分になります。

薬の構造を破壊してはダメ

 除放剤(ゆっくり崩壊する設計)のように薬の構造を破壊してはならない薬があります。割線がない薬は割ってはならない薬かもしれませんので、医師・薬剤師に必ず相談してください。

キッチンスケール(はかり)では精度不足

 家庭用のキッチンスケールは良くて0.5g(500mg)単位しか計測できません。それでは精度が足りず、精密スケール(0.001mg単位)が必要になります。多くの人が用意できないので、ウォータータイトレーションが必要になります。

細粒(粉のクスリ)で十分では?

 細粒がラインナップされてないGABA-A受容体作動薬があります。細粒がラインナップされていても、調剤薬局に置いていない場合もあり、その場合は調剤を断られる場合があります。錠剤よりは調剤に時間がかかります。

 医師が漸減する必要性を認めない場合もあり、処方箋を書いてもらえない場合もあるようです。

GABA-A受容体作動薬って水に溶けるの?

 添付文書を10件ほど調べたところ、GABA-A受容体作動薬は水にほとんど溶けない事がわかりました。このことからウォータータイトレーションに向いていないと言えます。それでもウォータータイトレーションを紹介している理由は、実践者が複数名おり、容量調節では他に良い方法が思いつかないからです。

販売名(一般名) 分類 水溶性について
ソラナックス(アルプラゾラム) ベンゾジアゼピン系 水にほとんど溶けない
サイレース(フルニトラゼパム) ベンゾジアゼピン系 水にほとんど溶けない
レキソタン(ブロマゼパム) ベンゾジアゼピン系 水にほとんど溶けない
メイラックス(ロフラゼプ酸エチル) ベンゾジアゼピン系 水にほとんど溶けない
ドラール(クアゼパム) ベンゾジアゼピン系 水にほとんど溶けない
ホリゾン(ジアゼパム) ベンゾジアゼピン系 水にほとんど溶けない
デパス(エチゾラム) チエノジアゼピン系 水にほとんど溶けない
レンドルミン(ブロチゾラム) チエノジアゼピン系 水にほとんど溶けない
マイスリー(ゾルピデム酒石酸塩) Z薬(非ベンゾジアゼピン系) 水にやや溶けにくい
アモバン(ゾピクロン) Z薬(非ベンゾジアゼピン系) 水にほとんど溶けない

 錠剤を水に入れて暫く待つと崩壊し、かき混ぜれば溶けているように見えるかもしれません。しかし、溶けているのは添加物で、主成分はほとんど溶けていないかもしれません。

ウォータータイトレーションの実践

道具の用意

  • 10ml計測できるビーカー 1個
  • 500ml(50mlから500mlまで1ml単位)計測できる軽量カップ 1個

 ビーカーや軽量カップの目盛りは目安程度の精度しかありません。正確に測るためにはメスシリンダーなどが必要になります。水は4℃のときに体積が一番小さくなります。水温によって体積が変わります。

 今回は入手しやすさと、錠剤を割るより精度が上がれば良いとの考えから、候補として例示しました。

私が考える手順

 50ステップで減薬する場合を考えます。1ステップで2%減になります。

490ml(2%減)を作る場合

  1. 計量カップに500mlの水を量り取ります。
  2. 錠剤を計量カップの水に入れて30分放置します。
  3. スプーンやマドラーでよくかき混ぜます。
  4. 速やかに10mlを捨てます。
  5. 計量カップに残った490mlを3回ぐらいに分けてゆっくり飲みます。
  6. 使用した道具をきれいに洗います。

40ml(92%減)を作る場合

  1. 計量カップに500mlの水を量り取ります。
  2. 錠剤を計量カップの水に入れて30分放置します。
  3. スプーンやマドラーでよくかき混ぜます。
  4. 速やかに計量カップからビーカーに10ml移し、飲みます。
  5. 合計4杯(40ml)飲みます。
  6. 使用した道具をきれいに洗います。

作り置きしない

 作り置きすると、間違って同居人が飲んでしまうかもしれません。薬が変質することもありえますので、なるべく作り置きしないほうが良いと思います。

まとめ

 ウォータータイトレーションは携帯可能な道具で薬の摂取量を調節できるので便利です。刃物で錠剤を2より多く分割する場合と比べると、マシな方法だと思います。迷った場合は必ず医師や薬剤師などの医療従事者に相談してください。

実践者のサイト

参考資料

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